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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)での漢方の使用について(山内医師)

2021.9.15
お知らせ
医局より

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今回担当致します医局の山内です。

当院では初診時に妊娠にむけての色々な検査を行い改善点がないかを把握し、不妊治療を行っていきます。超音波検査で左右卵巣に多数の卵胞が確認できる場合を多嚢胞性卵巣、さらに月経不順や黄体形成ホルモン(LH)もしくは男性ホルモンの高値を認める場合を多嚢胞性卵巣症候群(以下PCOS)と言います。

多嚢胞性卵巣でも月経周期に乱れがなく何も症状が無い場合もありますが、多くは排卵時期にばらつきが生じ、無排卵の場合もあります。

PCOSは全女性の約10%に認め、不妊治療に来院される患者さんの約3分の1の原因になるのではないかと言われています。

治療方法ですが、BMIが高値の場合はまず運動・減量をします。1-2ヶ月で5-10%ほどの減量を目指し、数ヶ月はダイエットを持続します。5%くらいの減量でも排卵することがあり、標準体重にこだわる必要はありません。

インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性を約30%に認めるため、インスリン抵抗性がある場合は、インスリン抵抗性改善薬のメトフォルミン塩酸塩やイノシトールの内服をします。

排卵を促すために排卵誘発を行いますが、クロミフェンクエン酸塩の内服での排卵率は50%です。クロミフェンクエン酸塩では子宮頚管粘液の減少と子宮内膜の菲薄化が見られる事があり、妊娠率が思うほど上がらないのが現状です。内服薬が有効でない場合は注射で排卵誘発を試みます。毎日注射を行うゴナドトロピン療法での排卵率は70%で妊娠率は60%くらいと言われています。

双子・三つ子・四つ子などの多胎の可能性は内服だと3-5%、注射では10-20%と言われ、多胎には注意をする必要があります。

内服のクロミフェンクエン酸塩での妊娠率は限定的ですし、注射は通常毎日行うため、保険適用でも月に十数万円かかる場合もあり、非常に負担の大きいものになります。

そこで当院では漢方を併用する事で治療効果を高めたいと考えています。ご希望時には漢方問診票をお渡しし、それぞれの体質に合わせた漢方を選択します。PCOSでの漢方の使用については、これまで多数の報告がされています。漢方を併用する事で排卵しやすくなり、卵質や子宮環境が整う事を期待しています。

これから来院を考えられている初診の方でも現在通院中の方でもご希望の場合は、お気軽にご相談ください。