生殖遺伝カウンセリングは遺伝子や染色体に関連したことがらについて、ご相談を受ける場です。不安に感じておられること、疑問に思われていることを伺い、それらについて適切な情報を丁寧にわかりやすくご説明いたします。正しい知識を得て、情報を整理することで、さまざまな不安や悩みが軽減される場合もあります。
また、遺伝や妊娠に関する心配や不安、これらをめぐってご家族の間で生じる悩みについても、ゆっくりお話ししていただき、皆様が十分に納得して次の一歩を踏み出せるよう、お手伝いさせていただきます。
生殖遺伝カウンセリングを担当するのは、専門教育を受けた認定遺伝カウンセラーです。他にも必要に応じて医師や看護師、胚培養士、統合医療コーディネーター、心理カウンセラー、栄養カウンセラー、などと連携して、皆様をサポート致します。
生殖遺伝カウンセリングで相談できる内容かわからないなど、受診するかどうか判断に迷われている場合にも、お気軽にご相談ください。
日時: | 月曜日〜土曜日 9:00〜16:00(不定休) |
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場所: | カウンセリングルーム |
予約方法: | ① 予約電話:06-6534-8824 (アナウンス番号212) ② 受付またはスタッフにお声かけください。 ※ 予約制となります |
時間: | 60分程度 |
料金: | 当院通院中の方 6,600円 上記以外の方 11,000円 |
担当: | 生殖遺伝カウンセラー(認定遺伝カウンセラーⓇ) |
お一人でも、ご家族でお越しいただいても結構です。(その場合も同じ料金です)ご家族で来られた場合にも、お一人ずつお話しをする時間を設けることもできます。どうぞ、お気軽にご相談ください。
※遺伝カウンセリングは自由診療です
保険診療の日にお受けいただくことはできません
別日でのご予約となりますのでご注意ください
「不育症検査の中に染色体検査ってあったけど詳しく知りたい」「流産したときに染色体検査をしたのは、どういう意味があったの?」 「妊娠したら、赤ちゃんに病気はないだろうか?」などの疑問や不安を抱えられるのは当たり前のことです。
「はっきりした質問や悩みはないけれど」、「遺伝や染色体とは関係ないかもしれないけれど」、「インターネットなどの情報が多すぎてわからない」「なんだかモヤモヤしている」といった方のために、生殖遺伝カウンセリングはあります。
ゆっくり時間をかけて、疑問や不安、心配について話し合い、情報の整理を一緒にさせていただきます。その上で、必要な情報を提供させていただき、今後のことについて考えるお手伝いをさせていただきたいと思っています。“話だけでもしてみよう、聞いてみよう。”と気軽に会いに来てください。少しでも皆様のお力になれるように、いつでもお待ちしています。
あなたにはご両親と似たところがありますか?顔が似ていても似ていなくても(!?)、あなたは、半分はお父さんから、もう半分はお母さんからできているのです。
このように体質や顔の特徴が親から子に伝わることを「遺伝」といいます。さまざまな体質や特徴は、ヒトの設計図といわれる「遺伝子」から作り出されます。たくさんある遺伝子は、バラバラではなく、ギュッと凝縮して「染色体」という棒状のかたまりになり、親から子に伝わっていきます。染色体とは、遺伝情報がたくさん含まれているもので、細胞ひとつひとつの核にはいっています。(図1参照)
染色体を顕微鏡で見ると図2、3のように見えます(これは検査担当者が並べなおしてくれたのできれいにならんでいます)。通常ヒトは2本で1組の染色体を23組、合計46本の染色体をもっています。2本1組のうち、1本は父親からうけつぎ、もう一本は母親からうけついでいます。常染色体と呼ばれる1番から22番までの染色体は男女共通です。最後の1組は性別を決める性染色体で、女性はXX、男性はXYの組み合わせになっています。
染色体検査では、染色体の本数と形に変化がないかを調べます。46本すべての染色体において、数や形の変化はおこり、染色体に変化があることを「染色体異常」と言い、特に数の変化を「数的異常」、形の変化を「構造異常」といいます。健康な方であっても、染色体異常を持つ方は300人に一人はいるといわれています。
染色体検査によって、何らかの変化が明らかになった場合でも、染色体そのものを治すことはできません。遺伝カウンセリングでは、カップルが必要とされている情報をわかりやすく提供し、どのようにしていくかをカップル自身が決められるように、一緒に考え、サポートいたします。
一般(平均年齢約30歳)に、妊娠の約15~20%が流産に終わるといわれています。流産率は女性の年齢が高くなるにつれて上昇します。図4は当院における流産率を女性の年齢別に示しています。
流産の原因の約50%が赤ちゃん側の染色体異常といわれています。(残りの原因については、不育症のページをご覧ください)流産した赤ちゃんの染色体異常率は年齢と共に上昇します。図5は、当院で調べた流産した赤ちゃんの染色体検査結果での異常率を女性の年齢別に示しています。
流産した赤ちゃんの染色体異常のほとんどは「数の変化(数的異常)」ですが、約2%に「形の変化(構造異常)」が見つかります。
ヒトの体は、2本で1組の染色体それぞれに含まれる父親と母親の遺伝情報が協力し合うことによりつくられます。染色体の「数的異常」とは、染色体の合計本数が46本ではないことです。1組2本の染色体が1本増えて1組3本になったり、1本減って1組が1本になることをいいます。1本増えて3本になっている状態をトリソミーといい、1本減って残り1本になっている状態をモノソミーといいます。
染色体に数的異常がおこり、染色体が3本のトリソミー(図6参照)になると、2本の染色体で行っていた作業にもう1本割り込むことにより作業に乱れが起こります。逆に染色体が1本のモノソミーでは、遺伝の情報そのものが不足しています。従ってどちらの場合も、体つくりをうまく行うことができず、ほとんどの場合は受精卵が育たなかったり、流産になってしまいます。妊娠が継続し、何らかの症状をもった子どもが生まれることもあります。
赤ちゃんを希望される全てのカップルで、卵子や精子がつくられるときに染色体の数の変化は偶発的におこることがあります。46本すべての染色体で数が増えたり、減ったりします。赤ちゃんの染色体に数の変化があっても、通常はカップルの染色体は正常である場合がほとんどです。
受精卵における染色体の数的異常は、女性の年齢が上がるにつれて少しずつ増えていきます。それにともない、数的異常による流産も、女性の年齢が上がるにつれて上昇します。
染色体の「構造異常」とは、染色体の形に変化がおこることです。1本の染色体の一部分が入れ替わったり、増えたり、減ったりしている状態のことをいいます。
染色体の本数に関わらず、構造異常により染色体の量に過不足がおきると遺伝情報にも過不足がおこり、体つくりをうまく行うことができず、流産になってしまいます。構造異常は、“偶然に卵子や精子の染色体が変化した場合”と、“もともとカップルのどちらかの染色体の形が変化していた場合”があります。前者の“偶然起こった場合”には、次の妊娠で同様の染色体の変化がおこる可能性はほとんどありません。しかし、後者の“もともと形が変化していた場合”には、次の妊娠でも変化した染色体が子どもに伝わり流産となる可能性が高くなります。
そのため、構造異常で流産された場合、カップルに変化した染色体がないかどうかを染色体検査で調べることがあります。染色体検査は採血のみで、カップルで48,000円(税別:2016年3月現在)です。結果が出るまでに3~4週間かかります。遺伝カウンセリングでは、染色体検査までにこの検査を受けるに当たっての詳しい説明をさせていただきます。
前出の“もともとカップルのどちらかの染色体の形が変化していた場合”の「構造異常」の大部分は、「転座」とよばれるタイプの構造異常です。転座とは染色体が切断され、他の部分に結合している状態をいい、「相互転座」と「ロバートソン転座」がほとんどです。(図7参照)流産を繰り返されるカップルの3~6%に、どちらかの染色体に転座が認められ、その方を転座保因者と呼びます。
転座保因者は、その一部が互いに入れ替わっただけで、全体として染色体の量に過不足がないため、これまでもこれからも特に症状が出ることはありません。しかし、妊娠・出産に際し、卵子や精子に染色体の過不足が起きやすくなるため、不妊症や不育症になることがあります。図8は転座保因者カップルの受精卵(子ども)の染色体の組み合わせを図示したものです。ご参照ください。
転座保因者では、染色体の過不足のある受精卵が通常より多くなる為、流産率が60~70%に上昇し、不育症になりやすくなります。また、病気を持った子どもがまれに(数%)生まれることがあります。
妊娠が継続した場合、胎児の染色体は出生前診断(妊娠15週以降に行う羊水検査など)で調べることができます。妊娠前に染色体の過不足がないか調べ、次回以降の流産を減らす方法として着床前診断があります。
男性不妊症の原因の5~10%は、染色体や遺伝子の異常と言われています。染色体異常の多くは、X染色体の数が通常より1本多いクラインフェルター症候群です。
クラインフェルター症候群は、男性500人に1人の頻度でいると言われ、日常生活には問題がないことが多く、診断されていないことがほとんどです。しかし、X染色体が1本多いことが精子形成に影響し、無精子症になります。また、現在わかっている精子形成に関係する遺伝子異常には、Y染色体にあるAZF領域の欠失があります。この領域の欠失は血液検査で調べることができます。
男性不妊症では、その治療法として精巣内精子回収法(TESE)により、精巣から直接精子を採取する治療法があります。TESEにより精子を回収できるかを判断するために、染色体検査やAZF検査は非常に重要な検査になりますが、検査結果によっては、精子回収は難しいという結果がでることもあります。男の子が生まれた場合には、子どもの妊孕性に影響するという結果がでることもあります。染色体検査やAZF検査によって、何らかの変化が明らかになった場合でも、染色体や遺伝子そのものを治すことはできません。
遺伝カウンセリングでは、男性不妊症特有の遺伝の問題や今後の健康管理など、必要とされている情報をわかりやすく提供します。そのうえで、どのようにしていくかをご自身が決められるように、一緒に考え、サポートいたします。お一人でもご夫婦でも、お気軽にご相談下さい。