手術療法

2014年までは河内総合病院に当院から医師が出向いて手術を行っておりましたが、現在は当院医師が関わる手術は実施しておりません。
そのために、現在、手術を必要とする方は専門病院をご紹介しております。

手術の適応疾患

①卵管異常(卵管周囲癒着、卵管采癒着、卵管水腫など)
②子宮筋腫
③子宮内膜症
④子宮奇形
⑤粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ

があります。具体的にそれぞれの内容について説明いたします。

①卵管異常(卵管周囲癒着、卵管采癒着、卵管水腫など)

1. 卵管周囲癒着、卵管采癒着

卵管の癒着は卵管の通過性を悪くしたり、卵子のピックアップ障害を引き起こすことになります。癒着を取り除く手術を行います。

2.卵管水腫

卵管采部(卵管の先)が、ソーセージ状に丸くなり完全に詰まっている状態で、その中には、妊娠に悪影響を与える液がたまっています。卵管が完全に詰まっていますので、卵子や精子は通ることができず、自然妊娠は成立しません。

自然妊娠を希望される場合には卵管形成術(卵管を元通りに治す手術)を行います。

卵管形成した卵管の先の部分は、卵管水腫に戻ることを防ぐために解ける糸で縫い合わせ固定します。ただ、手術後に卵管水腫に戻ってしまうこともあります。

卵管水腫がある女性の体外受精の成績は、卵管水腫がない女性と比較して妊娠率が約1/2に低下し、流産率が2倍に上昇します(グラフ;卵管水腫と体外受精の成績)。卵管内の水が子宮内に流れ込むことにより、子宮内の環境を悪くし胚が成長しにくくなることと、水の流れで胚が押し流される可能性があること、さらに子宮内膜へ悪影響により着床後の胚の成長が妨げられることがその原因と考えられます。そのために、卵管切除または卵管切断術(クリッピング術)による手術療法は非常に有効となります。

②子宮筋腫、⑤粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ

子宮筋腫、及び粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ

子宮筋腫は存在する場所により、漿膜下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫に分けられます。手術の適応は施設によりばらつきがあります。

ただ、粘膜下筋腫の場合は、その大きさによらず手術の適応となります。着床部位の子宮内膜に影響を及ぼすため、妊娠率の低下を引き起こします。

筋層内筋腫の場合は、子宮筋腫の大きさと内膜への影響により手術の適応があるかが診断されます。

漿膜下筋腫の場合には、大きくても多くは手術の適応となりません。

筋層内筋腫の手術方法は、子宮筋腫の大きさと個数から開腹手術か腹腔鏡手術を決めます。一応の目安は、直径が6cm以下で、2個までの筋腫であれば腹腔鏡下子宮筋腫核出術が可能と考えております。

粘膜下筋腫に対しては、積極的に子宮鏡下手術を行っています。おなかを切らずに腟から子宮内に内視鏡を入れて行う手術ですので、手術後の痛みはほとんどなく、手術後すぐに日常の生活に戻ることができます。

③子宮内膜症

不妊女性の25-40%に子宮内膜症が認められるとされ、また、子宮内膜症がある女性の30-50%が不妊症になるとされています。

子宮内膜症と不妊症との関係は明らかで、その原因は卵管の癒着による卵子のピックアップ障害や卵管通過性障害、さらに腹腔内の細胞障害物質などによる卵子の障害などが考えられています。

卵巣チョコレート嚢腫が認められる子宮内膜症は重症型です。その治療方法は年齢や不妊治療歴などから個別に考える必要があります。

腹腔鏡は、原因不明不妊症の診断として実施されることがあり、その検査で子宮内膜症と診断されることもしばしばあります。子宮内膜症を焼いたり切除したりする治療はもとより、腹腔内を洗浄するだけで妊娠に至ることもしばしば認められます。

子宮内膜症チョコレート嚢腫の治療としての腹腔鏡手術は、一般的に嚢腫核出術です。ただ、嚢腫核出では正常卵巣組織の一部が一緒に摘出されてしまい、その結果残る卵巣組織が少なくなることがあります。核出術を何度も繰り返した方の中には、卵子を含む正常の卵巣組織がなくなることがあります。年齢が若く(35才くらいまで)、十分に自然妊娠が期待できる場合には、子宮内膜症は手術対象と考えられます。年齢が35才以上であれば、体外受精を積極的に実施すること必要と考えています。

④子宮奇形

子宮奇形の多くは中隔子宮と弓状子宮です。

子宮奇形がある場合には、子宮内の血流が悪くなることから流産率が高くなります。3回以上の流産を繰り返す習慣流産となった方は、手術も治療の1つとして考える必要があります。

手術は開腹手術または子宮鏡下手術により行います。子宮の中隔などの余分な部位を切除し、きれいな形の子宮に戻します。その手術により流産率が減少します。