更なる妊娠率の向上を目的とし、当クリニックでは二段階胚移植法を行っています。これは、採卵後2~3日目に行う分割期胚移植と、採卵後5~6日目に行う胚盤胞移植を組み合わせた方法です。この方法ではまず、分割期胚を移植します。すると、この移植した胚が作用することによって、子宮内膜を着床準備状態にしてくれます。そこへ胚盤胞を移植するとで、着床しやすくなるというわけです。当院でもこの方法を、失敗を繰り返す難治症例に応用して成果をあげています。
妊娠実績胚盤胞移植のみを行う場合と比べ、胚移植のキャンセル率が下がるという利点があります。胚盤胞移植の場合、採卵後2~3日まで胚が順調に育っていたにもかかわらず、胚盤胞まで到達せずにキャンセルになってしまうことがあります。しかし二段階胚移植法では、一段階目に分割期胚を移植しているため、仮に残りの胚が胚盤胞にまで到達しなくても胚移植自体がキャンセルになることはありません。また、一段階目のみの移植でも、妊娠・出産に至っています。
また、この治療法は子宮内膜の薄い方にも効果が期待できます。当クリニックでも、良好胚盤胞移植を行ったにもかかわらず妊娠に至らなかった症例に対して二段階胚移植法を積極的に行っています。
採卵できる卵子には大きく分けて、未熟卵子と成熟卵子にわかれます。
卵子は、成熟卵子になると受精する能力をもちます。
通常の体外受精では、この受精する能力を持った《成熟卵子》を採卵し、受精・分割した胚を胚移植しますが、この未熟卵体外受精は《未熟卵子》を採卵し、体外で26時間培養して、成熟した卵子を受精させ、分割した胚を移植する方法です。
卵巣過剰刺激症候群をおこしません!
通常の体外受精では、排卵誘発剤を用いた卵巣刺激をおこなうことにより、一度の採卵で複数の卵子を回収することができます。しかし、卵巣刺激の副作用で卵巣がはれたり腹水が溜まったりすることがあります。未熟卵体外受精は基本的に卵巣刺激を行わないため卵巣過剰刺激症候群をおこすことはありません。身体的・経済的・時間的な苦痛が軽減します。
A1. 一般には多嚢胞性卵巣(たのうほうせいらんそう)の方が向いているといわれています。多嚢胞性卵巣の方は卵巣過剰刺激症候群の危険性が高いため、卵巣を刺激しないこの方法を選択することがあります。また、採卵できる数も多い傾向にあります。
IVF JAPANグループである大阪クリニックは、日本で始めての妊娠・出産例を報告し大きく取り上げられました。また最近では、培養環境を工夫し、卵子の妊成熟率や妊娠率を高める研究をすすめています。
A2. IVF JAPANでは、今までに出生した児の身体発育と先天異常について調査を行っています。現段階では、先天異常は1児にしか確認されておらず、今後も継続的に児の予後調査を行っていき報告していきたいと思っています。
体外受精においては、卵子をできるだけたくさん取り出すために、性腺刺激ホルモンを月経周期がはじまる頃から毎日注射し、一度にたくさんの卵胞(卵胞内で卵子が発育します)を育てます。たくさんの卵胞が発育すると脳下垂体と呼ばれるところから「排卵して下さい!」という命令を出すLH(黄体化ホルモン)が分泌され、排卵が引き起こってしまいます。卵子を取り出す前に排卵してしまっては、卵子が得られません。この「排卵して下さい!」という脳下垂体の命令を抑制する(黄体化ホルモンを抑える)のがこの薬の作用です。さらに、卵胞の発育を促すFSHというホルモンも抑えますので、卵胞刺激の注射のみで卵胞発育を調節することが出来ます。
「スプレキュアやブセレキュアのような鼻から噴霧する薬とはまた違うの?」と思われた方もおられると思います。アンタゴニストが開発されるまでは、アゴニストと呼ばれるスプレキュアなどの点鼻薬を用い、排卵が引き起こるのを抑制していました。しかし、この点鼻薬は卵子を取り出す前の月経周期の黄体期中期から、卵子を取り出すまで毎日数回(当クリニックでは1日4回)鼻に噴霧しなければならず、非常に面倒でした。ところが、このアンタゴニストは投与期間が短く(5日間前後)、しかも1日1回の注射のみで済みます。
スプレキュアやブセレキュアなどと比較し、ほてったりのぼせたりする症状も起こることがありません。さらに卵胞刺激に用いる注射の量も、スプレキュアなどの場合よりも少量で済むことも分かっており、経済的なメリットもあります。さらに、卵の発育に悪影響を及ぼすLH(黄体化ホルモン)を抑制するため、スプレキュア等に比べ質の良い卵が発育する可能性が高くなると期待されています。
スプレキュアと比較を行った結果、採卵数や良好胚獲得率、着床率、妊娠率、流産率に統計学的な有意差は見られなかったという多数の報告がされています。安全性については、注射の投与部位に多少の痛みやかゆみ、赤く腫れ上がる症状が認められる症例もありましたが、これらの症状はいずれも軽く、処置することなしに1日以内でほとんどの場合回復しています。