胚凍結保存

胚凍結をする利点

多胎妊娠の回避(余剰胚の凍結)

体外受精で、たくさんの移植可能胚があっても、子宮に戻す事ができる個数は多胎妊娠を防ぐために通常は1個に制限しています(症例により最高で3個)。凍結の技術がまだ確立されていなかった時には、移植しない胚は廃棄するしかありませんでした。しかし、胚を凍結保存する事が可能となり、別の周期に余剰胚を融解し移植することができるようになりました。

着床条件の改善

採卵には一度にたくさんの卵子を成長させるために排卵誘発剤などを投与し、異常に高いホルモン環境になり、子宮内膜と胚の発育のタイミングがずれることがあります。このような場合、受精した胚を一旦凍結し、それ以降の自然周期または ホルモン補充周期(※1) で子宮内膜の着床環境をととのえてから胚移植をおこなうことができます。

ホルモン補充周期とは
自然の排卵を抑える点鼻薬を使用し、人工的に卵胞ホルモンと黄体ホルモンを投与して子宮内膜を着床しやすい状態にして胚を融解し、移植をおこなう方法です。胚移植の時期があらかじめ予想できることや、通院回数が少なくて済むといった利点があります。 また着床に適したよい内膜ができやすいので、採卵周期の胚移植で妊娠に至らなかった場合でも、その後のホルモン補充周期による融解胚移植で妊娠されたということが少なくありません。

経済的・身体的な負担の軽減

一度の採卵で、よりたくさんの卵子を回収したいため、排卵誘発剤を多量に使用することがあります。その場合、患者様には身体的・精神的・経済的に負担がかかってしまします。余剰胚を凍結することにより、一度の採卵で複数回の胚移植が可能となり、これらの負担が軽減するのでは?と考えています。 また、卵巣過剰刺激をおこしやすい患者様の場合には、受精した胚を全て凍結し次周期以降に融解胚移植をおこなうことにより 卵巣過剰刺激症候群(※2) を回避することができます。

卵巣過剰刺激症候群
通常OHSSと呼ばれ、排卵誘発剤(特に注射)で多く問題になる副作用で、おなかが張る・血液が濃縮するといった症状があらわれます。おなかが張るのは排卵誘発剤によって刺激された卵巣そのものがはれたり、二次的に周辺にお水が(腹水)が溜まることが原因です。このような時に妊娠が成立した場合にさらに症状が悪化するのが特徴です。 OHSS軽症の場合には、軽い膨満感・違和感程度ですが、ひどい場合には卵巣はスイカほどの大きさに腫れたり、痛みや食欲不振・便通に異常がでたりすることもあります。胸に水が溜まると、呼吸困難を起こすこともあります。

胚凍結に関する Q & A

Q1. 胚を凍結している期間が長いと、胚に何か影響がありますか?

A1. 胚の保存期間による影響は報告されていません。当クリニックでも、5年間凍結保存をしていた胚での妊娠例があります。胚は半永久的に保存できると言われていますが、奥様の年齢が50歳を過ぎると継続して胚をお預かりすることはできません。

Q2. 一度融解した胚を再凍結することはできますか?

A2. 可能です。再凍結胚の融解胚移植による妊娠、出産もありますが、再凍結した胚が元気な状態で戻ってくる確率は、1度目の凍結に比べて下がる可能性があります。

Q3. 融解後の胚の生存率はどれくらいですか

A3.

凍結融解胚生存率(2018.1〜2018.12)

生存率は胚移植可能胚で算出