ここでは、患者様からお預かりした卵子、受精卵(胚)のお世話をしています。
本来、受精や胚が発育する体内では光は当たりませんが、体外で培養する場合、観察や作業をするために光が必要です。そこで有害な紫外線をほとんど含まないLED照明を培養室内のすべての機材で使用することで、光による胚への影響を抑える事が出来ます。
胚を育てるためのインキュベーター(培養器)を2016年より、患者様毎に個室を割り当て、胚を個別培養できるドライインキュベーターとタイムラプスインキュベーターを導入しました。このタイムラプスインキュベーターは一定間隔に写真撮影し連続観察が可能で、発育の経緯を調べることができます。すなわち発育過程を踏まえた胚評価ができ、より可能性のある胚を選択することが可能となります。さらには胚をインキュベーター外に出して観察をする必要がありません。このため、胚移植または凍結まで常に一定環境下で胚培養を行うことが出来ます。
これらのインキュベーターは、内部が一定の条件に保たれているか常にモニタリングされています。また、スタッフの不在時に異常が発生した場合は、スタッフの携帯電話にアラームメールが送信される「自動通報監視システム」を導入しています。これにより災害時を含め、常に培養室の状況を把握することが可能となっています。
採卵時、卵子は卵胞液中に浮遊した状態で存在します。私たち胚培養士はその卵胞液中にある卵子を顕微鏡を使って探します。
媒精とは精子と卵子を培養液中に一緒に入れ、精子と卵子の力だけで受精させる方法です。多数の精子の中で最も優秀な精子一匹のみが卵子の中に入ることができます。
顕微授精は卵細胞質内精子注入法(ICSI)といい、写真のような顕微鏡を用いて行います。卵子をホールドとよばれるピペットで固定し、非常に細いガラス管を用いて精子を一匹だけ注入する方法です。顕微授精の対象となるのは、一般体外受精において受精卵が得られなかった方、運動精子が極端に少ない方、精巣内精子を用いる方となっています。
体外受精(顕微授精)を行った翌日に受精しているかどうかの確認を行います。 正常に受精している場合、卵細胞質内に丸い核が二つ見えます。この核を前核 といいます。一つが精子由来、もう一つが卵子由来の核となっています。 また、前核が三つ以上ある受精卵は異常な受精であるため、胚移植に用いることはできません。
移植や凍結をする胚の観察を行い、写真撮影とグレード表記を行います。2日目、3日目の胚を分割期胚、5日目(6日目)の胚を胚盤胞期胚といい、表のように分類します。
排卵誘発剤の副作用により卵巣過剰刺激症候群の可能性があり、子宮内膜の状態が良くない場合、胚を一時凍結保存し、体調や子宮内膜を整えてから胚移植します。また、胚移植後良好な胚が余る場合、凍結保存しておくことができます。凍結の際には細胞にダメージがないように凍結保護剤による処理を行い、急速に-196℃の液体窒素内に投入し保存します。生存率は95%以上あり、安定している方法となっています。液体窒素内では、半永久的に保存できます。
詳しくは胚凍結保存をご参照ください
胚は分割が進むと胚盤胞となって、最終的にまわりの透明帯を破って子宮内膜に着床します。このことを孵化といいます。しかし透明帯が厚い又は凍結保存で硬くなると、うまく孵化が出来ない場合が考えられます。この場合、透明帯の表面を薄くしたり、一部に小さい穴を開けたりして孵化を促してあげます。当クリニックでは赤外線のレーザーを用いた方法を導入しており、安全かつ、正確に行えます。
採卵し、体外受精した胚がどのように育ったのか?とても気になることだと思います。私達は、胚移植前の患者様と実際にお会いし、胚の状態やご主人様の精子の状態について詳しくお話させていただきます。説明を行うお部屋は完全個室となっておりますので、どの様な質問でもお気軽にご質問下さい。
元気に育った胚がお母さんの子宮に戻されます。私達胚培養士は医師と相談し、最も状態の良い胚を選択します。そして、細いチューブの中に胚を入れ、子宮内膜の最も着床しやすい場所に胚をお戻しします。胚移植時、モニターにお戻しする胚を映しますので、胚の状態を見ることができます。また、胚移植後、お戻しした胚の報告書をお渡しいたします。
胚盤胞移植に関してはこちらをご参照ください。
射出精液中に精子が存在しない場合は、精巣内から組織を回収し、その中から精子を探します。泌尿器科の先生が手術を行い、胚培養士が取り出した組織から精子を探します。顕微授精に使用できそうな運動精子が確認できたら精子の凍結保存を行います。
※精巣内精子回収法はIVFなんばクリニックのみの治療となります。