■ 卵子子宮内移植法について ■
2002年11月9〜10日に開催された当クリニック森本義晴院長が会長を務めるIVF研究会にて、加藤レディスクリニック(東京都新宿区)の加藤修先生が発表され、また各新聞などでも報道されたことで非常に注目を浴びている新不妊治療法「卵子子宮内移植法(OUT(oocyte intrauterine transfer)法)」のご紹介です。
子宮や卵管に問題はなく、またご主人様の精液にも問題がないにもかかわらず自然妊娠しにくい原因不明の不妊症の方に対し、性交後に精子が子宮内に入った状態で卵子を採取(採卵)し、採取した卵子の卵丘細胞(卵子を包んでいる細胞)をすぐに除去し、そしてその卵子を子宮内に移植する方法です。加藤レディスクリニックでは、発表された時点でこの方法により28〜43歳の女性64人に実施し8名の妊娠が確認できたと発表されていました。
また、加藤先生は「原因不明不妊に対し、すぐに人工授精や体外受精を行うということを考え直す必要があり、この方法が有効だと考えられる症例を選んで行えば、妊娠率は5割程度に上がると見ている」と言われていました。
どういう方に対して有効であるか、どうしてこの方法が画期的な治療法なのか、妊娠成立のメカニズムについても触れながらご紹介したいと思います。
◇◇ 妊娠が成立するためには? ◇◇
妊娠が成立するためには、
1.膣内に射精された精子が、子宮頸管→子宮内→卵管へ上昇する
2.卵子が成熟し、正常に排卵が起こる
3.卵胞から排出された卵子が、卵管采から卵管へと取り込まれる
4.卵管に取り込まれた卵子と泳ぎ上がってきた精子が出会う
5.正常に受精し、胚が発育しながら子宮内へと戻ってくる
6.子宮内膜に着床する
のすべての条件をクリアすることが必要です。
◇◇ 原因不明の不妊症と卵子子宮内移植法 ◇◇
不妊症の治療を進めるにあたっては、多くの検査を行います。しかし、はっきりした不妊原因が見つからない場合があります。その場合、今までは性交のタイミングを指導し妊娠の確率を上げる「タイミング療法」や、採取した精子のうち優良精子を子宮内に送り込む人工授精が実施されてきました。
この原因不明のうちの大半が「精子と卵子が出会えていない」と言われています。つまり、「妊娠が成立するためには」の「3.卵胞から排出された卵子が、卵管采から卵管へと取り込まれる」ことが出来ていないと言うわけです。そこで加藤先生は、卵管が卵子を取り込む働きが悪いのであれば、精子が受精場所である卵管にたどりつける環境が整っている排卵時期に、卵子を子宮内に送り込めば卵子が卵管に達して、精子と出会うことが出来、そして受精することができるのではと考えられました。
◇◇ 画期的な方法であるもう一つの理由 ◇◇
体外受精は受精を体外で行いますが、この方法の場合体内で受精させる点でより自然妊娠に近い形で妊娠が期待できます。今のところ、妊娠率に関しては満足できるものではありませんが、どのような症例に有効であるか検討重ねることで、今後妊娠率はさらに上昇し広く行われる治療になると期待されています。
● 当クリニックでの卵子子宮内移植法の対象と適応 ●
当クリニックでも、さっそくこの治療を導入することにしました。対象は、原因不明の不妊症のうち卵管が卵子を取り込む働きに障害があると疑われる症例に行うことにしています。適応は、35歳以下・精液所見が正常・卵管通過障害を認めない(狭くなっている程度ならOK)・*ヒューナーテスト問題なしの方としています。
*ヒューナーテスト
膣内に射精された精子は、子宮頚管→子宮内→卵管へと上昇していきます。排卵の時期には、子宮頚管粘液が増加して、精子が子宮内へと上昇しやすいようになります。しかし、この頚管粘液によって精子の運動が阻害されてしまい、頚管から子宮内に上がれない場合があります。これを調べる検査をヒューナーテストといいます。