■ 新薬 「Gn-RH拮抗薬」について ■

 すでにヨーロッパやアメリカなど世界23カ国で発売され実際に使用されている薬で、日本では現在治験(臨床試験)を行っている段階の不妊治療で用いる新薬「Gn-RH拮抗薬(antagonist:アンタゴニスト)」について取り上げてみました。



◇◇ Gn-RH拮抗薬とは? ◇◇

 体外受精とは奥様から卵子を取り出し旦那様の精子と受精させ、そして奥様の子宮内に再び戻してあげる一連の操作を言います。その体外受精においては、卵子をできるだけたくさん取り出すために、性腺刺激ホルモンを月経周期がはじまる頃から毎日注射し、一度にたくさんの卵胞(この卵胞内で卵子が発育します)を育てます。たくさんの卵胞が発育すると脳下垂体と呼ばれるところから「排卵して下さい!」という命令を出すLH(黄体化ホルモン)が分泌され、排卵が引き起こってしまいます。卵子を取り出す前に排卵してしまっては、卵子が得られません。この「排卵して下さい」という脳下垂体の命令を抑制する(黄体化ホルモンを抑える)のがこの薬の作用です。さらに、卵胞の発育を促すFSHというホルモンも抑えますので、卵胞刺激の注射のみで卵胞発育を調節することが出来ます。


◇◇ 何が新しいのか? ◇◇

 「あれっ?今でも排卵を抑制する薬は発売されているはず・・」と思われた方もおられると思います。現在ではGn-RH作動薬と呼ばれるスプレキュア(イトレリン、ブセレキュア、フセット)やナサニールなどの点鼻薬を用い、排卵が引き起こるのを抑制していました。しかし、この点鼻薬は卵子を取り出す前の月経周期の黄体期中期から、卵子を取り出すまでずっと毎日数回(当クリニックでは1日4回)鼻にスプレーしなければならず、非常に面倒でした。ところが、このGn-RH拮抗薬は投与期間が短く(5日間前後)、しかも1日1回の注射のみで済みます。


◇◇ 他にどういった利点があるのか? ◇◇

 現在用いられているスプレキュアなどと比較し、ほてったりのぼせたりする症状も起こることがありません。さらに卵胞刺激に用いる注射の量も、スプレキュアの場合よりも少量で済むことも分かっており、経済的なメリットもあります。さらに、卵の発育に悪影響を及ぼすLH(黄体化ホルモン)を抑制するため、スプレキュア等に比べ質の良い卵が発育する可能性が高くなると期待されています。


◇◇ 有効性や安全性は? ◇◇

 現在、主に使われているスプレキュアと比較試験が海外で行われましたが、採卵数や良好胚獲得率、着床率、妊娠率、流産率に統計学的な有意差は見られていません。しかし、先程も書きましたように、効果は同じでも治療における負担が減るという点を考えると、将来的にGnRH拮抗薬の使用はスプレキュアなどのGnRH作動薬を上回るのではと言われています。
 安全性については、注射の投与部位に多少の痛みやかゆみ、赤く腫れ上がる症状が認められる症例もありましたが、これらの症状はいずれも軽く処置することなしに1日以内でほとんどの場合回復しています。


戻る