◆◇ 胚の凍結保存 ◆◇


 胚の凍結保存は、1972年に海外でマウスの胚を凍結・融解し出産に成功、ヒト胚
では1983年に妊娠・出産に初めて成功し、当クリニック(当時は河内総合病院不妊
センター)では、1996年に妊娠・出産に初めて成功しています。

◆◇ 胚凍結のメリット ◆◇

〜多胎妊娠の回避(余剰胚の凍結)〜

 体外受精でたくさん受精卵が採れても、子宮に戻す事のできる胚の数は多胎妊娠を防
ぐために最高でも3つとなっています(通常は2つ)。凍結の技術がまだ確立されてい
なかった時には、余った胚は廃棄するしかありませんでした。しかし、凍結の技術によ
り胚は凍結保存する事が可能となり、余剰胚は別の周期に胚移植を行うことが出来ま
す。

〜着床条件の改善〜

 採卵には一度にたくさんの卵子を成長させるために、排卵誘発剤などを投与し、異常
に高いホルモン環境となり、子宮内膜と胚の発育のタイミングがずれることが考えられ
ます。そこで、胚をいったん凍結し、自然周期または*ホルモン補充周期により子宮内膜
の着床環境を改善し胚移植を行うことで、妊娠率の向上につなげることができます。

*ホルモン補充周期による凍結融解胚移植
 スプレキュアを使って自然の排卵を止め、人工的に卵胞ホルモンと黄体ホルモンを投
与し、子宮内膜を着床しやすい状態にして胚を融解し胚移植を行う方法です。胚移植日
があらかじめ予定できることや、通院回数も少なくてすむといった利点があります。ま
た、着床に適した良い内膜が出来やすいので、採卵周期で胚移植を行っても妊娠が得ら
れなかった方が、後のホルモン補充周期による胚移植で妊娠されたということも少なく
ありません。

〜経済的・身体的負担の軽減〜

 1回の採卵で複数回の胚移植が可能になるため、排卵誘発剤などを多量に使用して採
卵を行う事の身体的・精神的・経済的な負担を軽減する事が出来ます。また、卵巣過剰
刺激を起こしやすい患者様の場合は、受精した胚をすべて凍結し次周期に移植する事に
より、*卵巣過剰刺激症候群を回避する事が出来ます。

*卵巣過剰刺激症候群
 通常OHSSと呼ばれ、排卵誘発剤特に注射剤で多く問題になる副作用で、お腹がはれ
る・血液が濃縮するといった症状が現れます。特に妊娠が成立した場合、さらに悪化す
るのが特徴です。赤ちゃんが卵巣を刺激するhCGをつくるためです。お腹がはれるのは、
排卵誘発剤によって刺激された卵巣そのものがはれたり、二次的に周辺にお水(腹水)
がたまることによります。軽症の場合は、軽い膨満感、違和感程度ですが、ひどい場合
には卵巣はすいか大くらいになり、痛みや食欲・便通に異常が出たりすることもありま
す。胸に水がたまると、呼吸困難を起こすこともあります。

◆◇ 胚凍結の方法 ◆◇

 現在、胚の凍結にはプログラムフリーザーと呼ばれる装置で行う「緩慢凍結法」と、
最近開発されてきている方法である「ガラス化法(Vitrification:ヴィトリフィケ
ーション)」があります。

 「緩慢凍結法」は、毎分0.3〜0.5度といった緩慢な速度で冷却を行い液体窒素
内に保存する方法で、発育能力を維持したまま胚を超低温で保存する方法で、もっとも
一般的な卵子の凍結保存方法として普及しています。「ガラス化法(Vitrification:
ヴィトリフィケーション)」は別名超急速凍結法とも呼ばれ、高濃度の凍結保護剤に
直接入れる事によって、緩慢な冷却が不要で大掛かりな凍結装置も必要とせず、簡便
な方法です。当クリニックでは、受精したことが確認出来た胚や、受精後2,3日目
の胚の凍結は「緩慢凍結法」で、主に胚盤胞の凍結には「ガラス化法」を用いていま
す。

◆◇ 胚凍結のFAQ ◆◇

Q1.胚は凍結する事により、どのくらいの期間保存できるのですか?
A1.胚は液体窒素に保存され、マイナス196度という非常に低い温度で保存されま
す。保存は半永久的に可能となります。

Q2.一度融解した胚を、再度凍結することはできるのですか?
A2.凍結・融解といった一連の操作で、胚はかなりのダメージを受けます。よって、
再凍結された胚が元気な状態で戻ってくる可能性は非常に低くなります。再凍結という
事態を防ぐためにも、たくさんの胚を凍結する場合には、何本かの凍結用ストローに分
けて凍結を行い、融解時にはその1本ずつを融解しています。


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