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麻疹(はしか)について

2019.6.10
レポート
医局より

通院中の患者様へ

今月のコラムを担当します、医師の太田です。
今回は麻疹(はしか)についてお話させていただきます。

風疹(三日はしか)は皆さんもご存じの通り、妊娠初期に妊婦さんが感染してしまうと胎児へウイルス感染が起こり、難聴や白内障、心疾患、発育遅延など先天性風疹症候群といわれる赤ちゃんが生まれる可能性があります。日本では2003年から2004年に局地的に風疹が流行し、つらいことに先天性風疹症候群と診断された赤ちゃんが10名もいました。

報道機関や医師、患者会による啓蒙活動もあり、風疹と妊娠に関しては世間の理解も進み、妊娠前に抗体価を確認される女性も増えています。

では、麻疹ですが、昨年末も沖縄や大阪で局地的な流行がありました。
以前も麻疹は小流行を起こしていますが、発生報告によると今回の流行は、麻疹の予防接種を2回施行されていない、28歳以上の方の成人間での流行が目立ったようです。
麻疹は非常に感染力が強く、風疹が飛沫感染(唾液のしぶきなどで感染する)するのに対し空気感染します。

空気感染とは、感染者と同じ空間にいるだけで感染し、マスクなどでは予防できません。
感染した場合は10日間の潜伏期間の後、発熱・咽頭痛、結膜の充血や目やになどの症状が数日継続し、いったん症状は軽快するかに見えた後に一気に高熱となり発疹が出てきます。

妊娠中に麻疹に感染すると、症状は重症化することが多く、また流・早産の頻度が上昇すると報告があります。風疹とは異なり妊娠中の感染で赤ちゃんの身体的な異常を起こすことはありませんが、まれに胎児の発育不全を起こす可能性があるようです。

妊娠中の感染により胎児に及ぼす影響が大きいため、風疹に関しては当院でも初診時に抗体価を測定し、抗体価の低い方にはMRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)接種をお勧めしています。麻疹抗体価は通常確認はしていませんが、ご本人が抗体価確認を希望された場合には検査可能です。麻疹・風疹ともに1回の予防接種で95%の方が免疫を獲得されますが、2回接種すると免疫獲得率は99%に上昇します。なお、予防接種後は2か月の避妊が必要です。

麻疹に関してご心配のある方は、診察時にご相談下さい。